岩手県盛岡市 糖尿病専門医のいるクリニック
脂質異常症(高脂血症)について
脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化が進行するまで症状が出ません。血管のつまりを防ぐため、放っておかずに検査・治療を行いましょう。
脂質異常症(高脂血症)とは
脂質異常症とは、血液中の悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪などが増えすぎたり、善玉(HDL)コレステロールの量が減りすぎた状態のことです。
放っておくと血管がつまる恐れがあります!
脂質異常症は動脈硬化を起こす病気の最大の要因です。
血液にコレステロールが多い状態が続くと、血管の壁に余分な脂がたまって「プラーク」と呼ばれるかたまりが作られます。
心臓の血管がつまった場合には急性心筋梗塞、脳の血管がつまった場合には脳梗塞を引き起こします。
血管のつまりを防ぐため、脂質異常症の治療を行いましょう。
特に、お腹の中に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」の方は悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多くなり、善玉(HDL)コレステロールが少なくなりやすい傾向があります。
また、遺伝的な原因で起こる「家族性高コレステロール血症」と呼ばれているものもあります。このタイプは、悪玉(LDL)コレステロール値が著しく高く、動脈硬化が進行しやすいことが知られています。ご家族、親戚の方で若くして心筋梗塞を起こした方がいる場合、家族性高コレステロール血症の可能性が高いため、まず、ご自身の悪玉(LDL)コレステロール値を確認してみましょう。
脂質異常症のタイプ
脂質異常症は、大きく分けて
1.高LDLコレステロール血症:LDL(悪玉)コレステロールが多いタイプ
2.低HDLコレステロール血症 :HDL(善玉)コレステロールが低いタイプ
3.高トリグリセライド血症(TG血症):中性脂肪(トリグリセライド: TG)が多いタイプ
の三つがあります。
脂質異常症の治療(食事療法)
食事療法のポイント
◆和食を多く取り入れましょう。
◆朝食,昼食,夕食を規則正しく。
◆腹八分目としましょう。
◆なるべく寝る前2時間は食べない。
◆ゆっくりよくかんで食べましょう。
◆早食い、まとめ食いはできるだけ避けましょう。
◆薄味にしましょう。
◆外食の時は残す工夫をしましょう。
➊コレステロールの摂取量は1日300mg以下にしましょう。
➋動物性の脂肪を減らし、魚や植物性の脂を多くしましょう。
➌アルコールは1日25g以下に。具体的には…ビールだと中瓶1本、日本酒の場合180ml、焼酎なら100ml程度、ワインは200ml程度。
➍食物繊維を多くとりましょう(食物繊維はコレステロールの吸収を抑えます)。
➎魚、大豆製品を多くとりましょう。
➏清涼飲料水や菓子類などの過剰摂取は控えましょう。
➐マーガリン、ショートニング(食用加工油脂の一種)、菓子類に含まれる悪い脂(トランス型不飽和脂肪酸)の過剰摂取は控えましょう。
体にいい脂をとりましょう(質の良い脂肪酸)
コレステロールが高い場合、コレステロールの摂取量が問題になりますが、摂取する脂肪の種類も、コレステロールや動脈硬化に影響を与えるため大切です。
食事中に含まれる脂肪の中でも、どんなものが体にいいのか紹介致します。
食事の脂質の主な成分は脂肪酸という物質です。
脂肪酸には、悪玉コレステロールを上昇させる質の悪い脂肪酸(飽和脂肪酸)と、逆に悪玉コレステロールを軽度低下させる作用のある質の良い脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)があります。
質の悪い脂肪酸
飽和脂肪酸:動物性の脂肪...ラード(豚脂)、牛の脂、鶏皮、ベーコン、脂肪の多い乳製品、洋菓子、アイスクリーム、ココナッツ油などに多いです。
トランス脂肪酸:マーガリンやショートニングのようない植物油を人工的に加工したものや、脂質を高温で加熱したときにできるもので、とりすぎると心臓病のリスクが高まります。
「積極的に控えるべきは動物性脂肪とトランス脂肪酸」
「できる範囲で控えたいのが卵・魚卵系、内臓系」
質の良い脂肪酸
不飽和脂肪酸:植物性の脂肪、魚類の脂肪...オリーブオイル、なたね油、ゴマ油、大豆油、青魚(サバ、イワシ、アジなど)などに多いです。
炭水化物、アルコールや果物の摂りすぎによって中性脂肪が増加します。
継続が力...運動療法
運動療法で体を動かすことは、コレステロールの治療にも、身体的にも精神的にも好ましいです。
脂質に対しては、中性脂肪が低下し、HDLコレステロールは上昇します。このほか、血圧を低下させる、糖尿病の血糖コントロールがよくなる、さらに、うつ病の予防、がん予防、動脈硬化の予防など、さまざまな良い効果があります。
運動療法でお勧めなのが、有酸素運動(ウォーキングやジョギング、サイクリングなど)と筋力トレーニングを組み合わせることです。
薬物療法
食事療法、運動療法を組み合わせても、脂質異常症が改善しない場合、内服薬での治療が必要になってきます。
(1)動脈硬化がすでに起こり、治療中の方 (2)糖尿病や高血圧、喫煙など、さらに動脈硬化が進みやすい環境にある方 (3)遺伝的に動脈硬化を起こしやすいことが分かっている方(たとえば家族性高コレステロール血症など)は、LDLコレステロールや中性脂肪をより低下させる必要があります。
こうした動脈硬化のリスクが高い患者さんでは、これ以上進行しないようにすることが非常に重要で、基本的には診断時から薬物療法が必要 になります。
近年、脂質異常症の患者さんが増え、コレステロール、中性脂肪を低下させる薬が、広く処方されるようになりました。
これらの薬は脂質異常を改善させるだけ ではなく、一部の薬では動脈硬化の進行を直接抑え、改善させる作用もあることが分かってきています。
現在処方される薬には次のものがあります。
スタチン(ロスバスタチンなど)
肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDL(悪玉)コレステロールを強力に低下させ、中性脂肪も低下させます。
LDL(悪玉)コレステロールが高い場合、いしい内科・糖尿病クリニックではスタチンを中心に処方しています。
LDLコレステロールがかなり高い場合はロスバスタチン、それほど高くない場合はプラバスタチンを処方しています。
エゼチミブ(ゼチーア®)
腸内でコレステロールが豊富な胆汁酸の再吸収を抑制することにより、コレステロールを低下させます。
ペマフィブラート(パルモディア®)
主に肝臓で中性脂肪(TG)が作られるのを抑える薬です。
善玉(HDL)コレステロール値を増やす効果もあります。
「選択的PPARαモジュレーター」という最近新しく登場した薬で、スタチンと併用できる利点があります。
中性脂肪が高い場合、いしい内科・糖尿病クリニックではペマフィブラートを処方しています(腎機能が低下している場合を除く)。
フィブラート系(フェノフィブラートなど)
主に肝臓で中性脂肪(TG)が作られるのを抑える薬です。
善玉(HDL)コレステロール値を増やす効果もあります。
※ペマフィブラートの登場で、新たに処方する頻度は少なくなりました。
EPA(エイコサペンタエン酸)
青魚に含まれる成分(不飽和脂肪酸)から作られた薬で、中性脂肪値を下げる効果があります。
また、血液をサラサラにする効果もあります。
ニコチン酸系
ビタミンの一種で、肝臓で中性脂肪が作られるのを抑えます。
また、HDLコレステロール値を上昇させる効果もあります。
陰イオン交換樹脂(レジン)
腸内でコレステロールが豊富な胆汁酸と結合して、コレステロールを便中に排泄させ、低下させます。