岩手県盛岡市 糖尿病専門医のいるクリニック
健康な人でも糖尿病患者さんでも、食事を取ると血糖値は上昇します。しかし、食後に起こる急激な血糖値上昇は、糖尿病患者さんにとって好ましいことではありません。
最近では、空腹時と食後の血糖値の差が大きいこと(血糖値スパイク)が、さまざまな合併症の危険性を高めるといわれています。
血糖値を上昇させやすい栄養素や食べ方を知って、血糖値の急上昇を抑えることが大切です。
1型糖尿病で、自分のインスリン分泌がほとんどなくなっている方の場合、注射したインスリンの効果がなくなると、食事をしなくても血糖値は自然に上昇していく 傾向にあります。したがって、持続性のあるインスリンやインスリンポンプを用いることで、食事をしない時は血糖値が血糖値ができるだけ一定になるように調整します。
このようなインスリンを基礎インスリンと呼びます。
基礎インスリンに対して、食事前や高血糖を調整するために打つ超速効型インスリンを追加インスリンと呼びます。食事のためのインスリン量は、カーボカウント を用いて計算します。
高血糖の時に増量するインスリンは、補正インスリンともいいます。1単位のインスリンで、どの程度血糖値が下がるのかをインスリン効果値と呼び、血糖値に応じて 補正インスリンを追加します。
当院では摂取する炭水化物量を把握して、血糖を下げるのに必要なインスリン量を計算してコントロールする「カーボカウント」を用いた栄養相談も可能です。 (最近よく言われている糖質制限食とは異なります)
炭水化物は、食事の中の主要な栄養素であり、食直後 の血糖値の上昇に大きく関わります。
たんぱく質や脂質でも血糖値はゆっくりと上昇しますが、カーボカウントでは、より早く血糖値があがる炭水化物に特に注目します。
炭水化物の量を把握して一食あたりの炭水化物の量をある程度一定にすることで、血糖値が安定しやすくなります。
強化インスリン療法を行っている、主に1型糖尿病の方は、食事の炭水化物の量に合わせて食直前のインスリン投与量を調整することで、血糖値が安定しやすくなります。
ただし、食事全体のエネルギー量が多くなると、体重が増えてしまうため注意が必要です。
炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素のうち、急激に血糖値を上げやすいのが炭水化物です。
炭水化物の量を数えて、1食あたりの摂取量をほぼ一定にすることで、血糖変動をコントロールできます。
※カーボとは英語で炭水化物のことです
初期のコツは食品交換表を併用することです。
糖質が含まれる食品は、主に表1,2,4に分類される食品(と砂糖や菓子類)がカーボカウントで見積もりの対象になります。
炭水化物(カーボ)を多く含む食品では、糖質の量に比べて食物繊維の量はそれほど多くないので、
炭水化物量(カーボ)≒糖質量と考えます。
例えば、
食パン100gなら、100g×50%≒糖質50g。(実際は46.7g)
ロールパン100gなら、100g×50%≒糖質50g(実際は48.6g)
ごはん200gなら200g×40%≒糖質80g。(実際は74.2g)
芋などは少しばらつきが大きくなります。
さつまいも(ゆで):100g中炭水化物13.4g
さつまいも(やきいも):100g中炭水化物39.0g
です。
やきいもは水分が減っているので、炭水化物量が増えていると考えられます。
栄養成分表示例を活用するのもいいでしょう。
1日にどれだけの量の炭水化物(カーボ)が含まれているかを把握することは、血糖を乱すことなくからだに必要な炭水化物(カーボ)を上手に摂取するための手法です。 「炭水化物(カーボ)を控えて血糖値を下げる」ことを目的とした、極端な糖質制限食を推奨するものではありません。
一方で、患者さんによっては、ゆるやかな糖質制限を勧める場合もあります。私は、極端な糖質制限には否定的ですが、同時に血糖コントロールの重要なポイントと考えています。適切に糖質量を意識することで、良好な血糖コントロールを目指しましょう。
*適切なカロリー制限が最も健康的であることは疑いようがありません。その前提の上に、糖質制限の良い部分を取り入れていきます。